また読み直してみると、これが現代の小説でありながら、な
かなか哲学的で、ふだん誰もが当たり前で気にもしてないこ
とが実はとても大切であったりすることに気づかせてくれま
す。
主人公の青年は、医者から長くは生きれないことを宣告さ
れます。
その後、悪魔が現れて、「この世から何かを一つ消せば一日
だけ命をあげる」とささやかれます。
“世の中には悪魔に魂を売りたがっている人間がたくさんいる。
問題は買ってくれる悪魔がなかなかいないこと”で、主人公は、
非常にラッキーなのだと教え込まれます。
“道を知っていることと、実際に歩くことは違う”(P94)
“ほとんどの大切なことは、失われた後に気づく”(P117)
“自分で自分の死を悲しむことはできない。死は自分の周りに
しか存在しない。本質的には猫の死も人の死も同じなのだ。
なぜ人間が猫を飼うか。
人間は自分が知りえない、自分の姿、自分の未来、自分の死を
知るために猫といっしょにいるのではないか”(P166)
解説の中森明夫氏もこの作品は後世まで読み語られる作品だ
と絶賛。
この作品から「愛する」とは「消えてほしくない」ということ
なのだということを訴えてました。
